入れ歯とは
歯を失った際、空いたスペースを補うための治療が必要になります。治療方法にはインプラントやブリッジなどいくつか種類があります。
お口の状態や患者さまの希望などにより最善策はケースバイケースとなりますが、そのうちのひとつが入れ歯です。取り外しができる入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯の2種類があり、プラスチックだけでできているものや金属で強化されたものなどがあります。
入れ歯を使用することでかむ力を取り戻し、食事がしやすくなるため、食生活が豊かになるだけでなく、よくかんで栄養を摂り入れることで全身の健康へと繋がります。他にもしっかりと発音することができるようになり、口元や顔周りが若々しく見えます。
歯が抜けたままの状態にしておくとかむ力が低下し、以前のように食事を楽しめなくなってくることがあります。栄養が偏りがちになり、身体の健康にも影響を及ぼしかねません。
また、他の歯が傾いたり動いたりすることから、かみ合わせが悪くなってしまうこともあります。放置すればするほど悪化してしまい、治療方法が限られてきてしまうこともあるため、早めに歯科医院で診てもらうようにしましょう。
入れ歯のお手入れの必要性
自分の歯と同じように入れ歯にもプラークや食べかすなど細菌の塊が付着します。
お手入れを怠ると口臭の原因や口内炎の原因になります。細菌が付着した入れ歯を使っていると慢性的な圧迫や刺激により、歯ぐきや粘膜に炎症が起こりやすくなります。
使っていくうちに着色汚れや歯石が付いてしまうこともあり、見た目もあまり気持ちが良いものとは言えません。
特に部分入れ歯の場合には、バネを引っかける歯や入れ歯と隣り合わせになる歯や歯ぐきに細菌が移り虫歯や歯周病のリスクを高めてしまうこともあります。
他にも、お口の中の細菌数が増え、それが誤って気管に入ってしまうことで誤嚥性肺炎などの呼吸器疾患を引き起こしてしまう可能性もあるため、大変危険です。
入れ歯をしっかり清掃しお手入れすることは、お口の健康はもちろんのこと全身の健康のためにもとても大切です。
入れ歯の正しいお手入れ方法
入れ歯を清掃するタイミングは毎食後が理想ですが、難しい場合でも1日1回は丁寧に清掃するようにしましょう。
入れ歯は衝撃に弱い材質のものが多く、落として割ってしまうことがないように、また排水溝に流してしまわないようにシンクに洗面器などの容器を用意し、水を張り、その上で洗浄すると良いでしょう。入れ歯を外し、水道水で洗い流しながら、入れ歯用のブラシを使って清掃します。その際に、歯磨き粉などをつける必要はありません。歯磨き粉に配合されている研磨剤の成分によって、入れ歯の表面を傷つけてしまう可能性があるためです。
食べかすやプラークなど汚れが特に残りやすい部分は歯と歯の間や入れ歯の裏側、部分入れ歯の引っかけるバネの部分などです。
乳白色のプラークは歯の色と近いため分かりにくいですが、丁寧にしっかりと磨きましょう。ゴシゴシと力いっぱい磨いてしまうと入れ歯がすり減り、変形の原因にもなるため、優しくこするように磨くと良いでしょう。
また、熱湯をかけたり乾燥させたりすること、漂白剤の使用なども変形や変色の恐れがあるため避けましょう。
ブラシを使って入れ歯を磨くお手入れ方法の他にも、入れ歯洗浄剤を使うことでさらに細菌を減らし清潔に保つことができます。
ブラシで丁寧に磨いた後に、入れ歯洗浄剤を入れたお水やぬるま湯に浸漬すると、目には見えない汚れや細菌を取り除くことができます。浸漬する時間は洗浄剤の使用方法に従うようにしてください。取り出したら再度流水で洗い流し、お手入れ完了です。
洗浄剤を使ったお手入れは毎日できると理想的ですが、少なくとも数日ごとに行いましょう。
入れ歯そのもののお手入れも重要ですが、特に部分入れ歯の場合、バネを引っかける歯や入れ歯と隣り合わせになる歯をしっかり磨くことも欠かせません。
これらの歯は他の歯と比べて汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高くなるため、入れ歯と同じく丁寧に磨く必要があります。
バネを引っかける歯は、歯と歯ぐきの境目に汚れが溜まりやすくなるため、歯磨きの際に歯だけでなく歯ぐきとの境目に歯ブラシを当てるように意識すると良いでしょう。強く力を入れる必要はなく、優しくマッサージをするように磨きましょう。
入れ歯と隣り合わせになる歯は、歯ブラシを横から当てるようにし、角度を変えながら少しずつ動かすように磨くと良いでしょう。
スペースが狭い場合は小さめの歯ブラシを使うと隅々までしっかり磨くことができます。入れ歯の内面と接する歯ぐきの部分も優しく磨いてきれいにすると清潔に保つことができます。
入れ歯を長持ちさせるために
入れ歯はインプラントやブリッジと違い、取り外して清掃することが可能です。隅々まで目で確認しながらお手入れができるメリットもありますが、一度作製したらずっと変わらずに使い続けられるとは限りません。
最初はぴったり合っていた入れ歯も、使っていくうちに歯ぐきに当たって痛みを感じるようになったり、外れやすくなったり、または外れにくくなるなどの不具合が出てくることがあります。
他にも入れ歯がガタついて不安定、劣化によりひび割れや壊れてしまうこともあります。入れ歯そのものがすり減ることもありますし、入れ歯を支えている歯ぐきや骨が痩せて段々と隙間ができてしまうこともあります。お口の状態は加齢と共に変化していきます。
入れ歯の調子が悪くなってしまったら、自分で調整したりせずに歯科医院で診てもらいましょう。歯ぐきとどのように接しているか、負担になりすぎているところはないかチェックしてもらいましょう。入れ歯は定期的に歯科医師による調整を行うことでより長く使用することができます。
取り外しができる入れ歯ですが、主に活躍する場面は食事や会話をする時です。就寝時には外したほうが良いか、またはつけたままでも良いか迷う人もいるかもしれません。
基本的には寝ている間は、入れ歯は外しておきます。乾燥によるひび割れや変形を防ぐためにお水につけて保管することが勧められています。清潔に保つためにお水は毎日取り替え、保管する容器もきれいなものを使いましょう。しかし、入れ歯を外してしまうと顎に過剰な負担や残っている自分の歯に負担がかかり割れてしまう恐れがあるため、入れ歯をつけた状態で就寝することを勧めることもあります。
患者さま一人ひとりの状態によって対応が異なるため、不明な点がある場合は必ず歯科医師に相談するようにしてください。
まとめ
残っている自分の歯を少しでも長く健康に保つために、そして使っている入れ歯をより長持ちさせるためにも、毎日のブラシと洗浄剤を使ったお手入れ方法でできる限りのセルフケアを行うとともに、歯と入れ歯のどちらも定期検診を受けるようにしましょう。
お口の状態も入れ歯も日々変化していくものなので、快適に入れ歯を使っていくためにも、少しでも違和感を覚えたら我慢せずに歯科医師に相談してみましょう。
合っていないものを使い続けるとさらに合わなくなってきます。無理をせずにその都度自分に合う入れ歯に調整していきましょう。